遺言書で包括遺贈を受けた相続人以外の受遺者は自動車の所有権移転登録申請は単独申請できる?

私は現役の車検場に勤務する国家公務員。
ときたま備忘録的に仕事を通して勉強になったと感じた法律関係の記事も書いています。

今日は弁護士さんから中々面白い案件を担当することがありました。
具体的には遺言書による包括遺贈についての問い合わせだったのですが以下「遺言書で包括遺贈を受けた相続人以外の受遺者は自動車の所有権移転登録申請は単独申請できる?」として備忘録がてらまとめていきたいと思います。




①遺言書で財産を譲る遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類が存在する!



まずはウォームアップです。
遺言書によって財産を譲る行為を遺贈と言います。

この遺贈にはおおまかに特定遺贈と包括遺贈の2種類あります。

特定遺贈とは「不動産Aを長男に遺贈する」というように具体的にこの財産を誰に遺贈するかを明確にした遺贈です。
一方包括遺贈は「私の財産は妻と長男と長女が3分の1ずつ遺贈させる」というように財産の割合だけを明確した遺贈です。

②包括遺贈は遺言者の権利のみならず義務を引き継ぐ一般承継



さてこの遺贈の中の包括遺贈なのですがこれは講学上一般承継に該当すると解されています。
この一般承継というのは被承継人の権利のみならず義務までも含めた一切を引き継ぐことを指します。
(代表例としては相続や法人の合併を指すのですが包括遺贈による受遺者も含まれます。)

ここで民法の条文を確認しましょう

〇民法990条
包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する。

〇民法第896条
相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。
ただし被相続人の一身に専属したものはこの限りでない。






③弁護士からの遺言書による包括遺贈についての問い合わせ内容



ではここで弁護士からの問い合わせ内容を紹介します。

「全財産を内縁の妻に相続させる」という遺言書をもって内縁の妻に所有権を移転したいがその申請手続きについて伺いたいというのが問い合わせの内容でした。

遺言書で「○○に相続させる」という場合はその相続人からの単独申請手続きによることになります。
しかし内縁の妻は法定相続人ではありません。

このように「相続人以外に相続させる」という場合は登録原因を「遺贈」として処理することになり包括受遺者である内縁の妻を登録権利者。

そして登録義務者として遺言者の相続人全員が申請手続きを行う必要があります。
(遺言書で遺言執行人が選任されていればその執行人が登録義務者となりますが執行はされていませんでした。)

そこでその旨ご案内したところ・・・さすがに弁護士さんと思わずうなってしまうような質問を受けたのでした。
それは「本件は包括遺贈による一般承継なので自動車登録令11条により包括受遺者たるな年の妻からの単独申請で行けるのではないか?」という指摘でした。

④自動車登録令11条のその他の一般承継に包括遺贈は含まれる?



ではまずは今回弁護士の方が指摘をされた自動車登録申請手続きの単独申請に係る根拠条文たる自動車登録令11条をご紹介します。


自動車登録令第十一条



判決による登録、相続その他の一般承継による登録並びに自動車の新規登録、永久抹消登録、輸出抹消仮登録及び一時抹消登録は、登録権利者だけで申請することができる。





上述の通り包括遺贈は講学上一般承継に分類されます。
そうすると登録令11条の中の「相続その他の一般承継」の中に包括遺贈も含まれるため内縁の妻からの単独申請手続きで処理が可能なのではないか?
これが弁護士の方の主張でした。

さてこの弁護士の方からの鋭い指摘ですが・・・結論は不可です。

実は不動産登記のバイブルともいえる登記研究という雑誌の中でまさしくこの「相続その他の一般承継について包括遺贈は含まれるか否か?」について見解が示されています。
それは登記研究223号です。


登記研究223号



「不動産登記法74条1項1号における『表題部所有者の相続人その他の一般承継人』に包括受遺者は含まれない」





ではここで「その他の一般承継とは何を指すのか?」ということになりますが・・・これは法人の合併です。

このため確かに包括遺贈は一般承継には該当するものの不動産登記や自動車の登録における「相続その他の一般承継」の中にこの包括遺贈は含まれないという結論になるのです。

⑤「遺言書で包括遺贈を受けた相続人以外の受遺者は自動車の所有権移転登録申請は単独申請できる?」まとめ



以上「遺言書で包括遺贈を受けた相続人以外の受遺者は自動車の所有権移転登録申請は単独申請できる?」まとめでした。

この登記研究の根拠を提示し弁護士の方もめでたくご納得。
晴れて当初の案内通りの共同申請手続きで処理を進めることと相成りました。






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